ヒューマンインタフェースシンポジウム2016東京のワークショップとして,「人を対象にした研究の倫理的配慮」の議論をしてきました.
大阪工業大学の大須賀美恵子先生,京都大学の塩瀬隆之先生,目白大学の西山里利先生を交え,西山の司会の下で「人を対象にした研究の倫理的配慮」に関する事例紹介とヒューマンインタフェース研究分野での倫理的配慮のあるべき姿についての議論を行いました.事例紹介としては,筆者の医学・医用工学的分野での倫理審査の現状説明,西山里利先生の看護医療分野での倫理審査の現状説明,塩瀬隆之先生のワークショップの倫理的配慮の現状説明,大須賀美恵子先生の当学会での倫理意識調査の結果説明の順で展開しました.その後にフロアを交えてのディスカッションを実施しました.
ヒューマンインタフェース学会の倫理意識調査は有効回答率が低く,特に,研究倫理審査を行える機関をいまだに設置出来ていない会員所属先が少なからずある状況も浮き彫りになりました.特に大学や研究所よりも企業が深刻な状況であり,学会への委託案等も議論されましたが,費用と時間の兼ね合いで実現が難しい状況も明確になりました.倫理審査は被験者や被調査者の保護も重要であるが,弁護士の視点からは,その多くが研究者及び研究機関の保護に終始している状況も浮上しました.人間工学会のような当学会と分野が近い学会との協働,学部生や大学院生への研究倫理教育のあり方,インターネット社会での研究関係の撮影動画や撮影画像の使用者範囲,倫理審査内容の研究遂行後の評価の体制や方法にまで議論は及びました.当該分野に関心の高い先生により,論点も明確になって良い議論になりました.必要性の高い話題であり,今後も機会あるごとに議論の場を企画したいと思います.